安全な地下水を取り戻す未来のために ~PFAS汚染に対して私たちができること

講師の寺田良一さん(明治大学名誉教授)

7月27日、明治大学名誉教授の寺田良一さんを講師に東京・生活者ネットワーク主催でPFASの学習会を開催しました。

まずは、現在の東京水道水源についての話から始まり高度成長期における水源汚染で立ち上がった市民活動についてのお話がありました。
23区は、100%河川水、多摩地区は、河川水8対地下水が2程度の割合。昭島市のみが100%地下水です。
過去には、多摩地区では湧水や浅井戸(浅層地下水)を生活用水としてきましたが、高度成長期に生活排水や工場排水が河川や浅井戸へ流入することによる汚染や有機塩素溶剤による地下水汚染が起こったことから、三多摩問題調査研究会をはじめとする地下水、湧水保全をめざす市民団体が立ち上がりました。
1982年、府中市と三鷹市の井戸などから検出されたトリクロロエチレンの問題では、三鷹市では曝気(浄水処理)して取水を再開したが、府中市では、汲み上げ(揚水)を停止しました。
府中・生活者ネットメンバーなど市民の有志が、調査データを要求したことで井戸への汚染拡散が確認されたことからも、PFAS汚染についても検出された井戸の取水を停止するのではなく、汲み上げて浄化していくことが必要だということがわかります。

 

PFAS汚染の課題は

PFAS(有機フッ素化合物)は、発がん性や低体重児が生まれるなど人体への影響が指摘されています。非常に分解しにくく、「永遠の化学物質」といわれています。しかし、水や油をはじき、熱に強い性質を利用して調理器具や化粧品、ハンバーガーの包装紙、衣類の撥水材など、私たちの生活の身近にあるものに幅広く使用されてきました。その結果、気がつかないうちに使用し、体内に蓄積されている恐れがあります。また、基地での泡消火剤の漏洩、工場近辺への汚染、産廃処分場での汚染などにより地下水が汚染され、河川や海にも広がっていくことが危惧されます。

基地公害としては、沖縄や横田基地の周辺の地下水から高濃度のPFAS等を検出。工場公害としては、大阪のダイキン淀川製作所付近と隣地の畑の井戸からもPFOSを検出し、血液検査した元従業員から高い値が出ています。また、産廃処分場における汚染では、2023年、岡山県の吉備中央町の浄水場からPFASが検出され、汚染源の上流の産廃処分場からPFASを含む活性炭が見つかりました。この他、首都圏には、立体駐車場の泡消火剤が380万トンあり、早急な対応が必要です。周辺に工場や産廃処分場など原因になる施設がないにもかかわらず、井戸から検出される場合もあり、複雑な地下水脈等から原因が特定できない場合もあります。

 

今後の取組みとして

水を浄化する技術は、進んでいますが、浄化した後の活性炭等に残留したものを無害化する技術は、まだ確立しておらず、高温度で燃やす必要がありますが処理できるところは限られているそうです。
環境省の「環境基本計画」には、科学的に不確実であることをもって対策を遅らせる理由とはせず、予防的な対策を講じるという「予防的な取組方法」の考え方に基づいて対策を講じていくべきであるとあります。今後、私たちが行うべきこととして、世論喚起と環境政策の原則を提示していくことが必要ということでした。

 

寺田さんのお話しの後には、調布市、武蔵野市、立川市、国分寺市の取組の報告がありました。それぞれの地域で調査を続けていくことが大切だということがわかりました。

小平市では、6月定例会で、民間井戸の水質調査(希望者を募り12ヶ所)を東京都の補助金で行うことが決まったほか、PFASに関する2件の請願が採択、小平市民の健康を守るために早急な対策を求める内容の意見書が1件可決され国と都に提出されました。
今後も情報を共有し、協力してPFAS汚染問題の解決を目指し、さらに活動を拡げ、一歩ずつできる対策を進めていきます。

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