視察報告 「泉南市子どもの権利に関する条例」の特徴と検証のしくみ

 

8月5日、子どもの権利条例を制定し、先進的な取組をしている大阪府泉南市に行きました。
行政の担当課長・公立小学校・条例委員会に関わる市民の3つの視点から、制定前から検討過程、制定から現状についてお話を聞きました。

 

 

 

 

泉南市は、「子どもの権利に関する条例」制定の動きは2003年に始まり、検討前から、計画や審議会での市民参加と子どもの実態や課題を把握するためのアンケート調査をおこないました。策定準備では庁内委員会を設置。2011年2月に検討が始まってから1年間で7回の検討会、6回の起草委員会、4回の研修会を行い、市内小学校の5年生から中学3年生の子どもに参加を呼びかけ前文作成に関わりました。8月には「第10回全国自治体シンポジウム」を開催。2012年10月「泉南市子どもの権利に関する条例」を制定しました。

 

泉南市子どもの権利に関する条例…子どもにやさしいまち(Child Friendly City)をめざして!

 

 

 

 

条例の3つの特徴

・前文作成に子どもたちが参加

子どもの意見表明と参加を目的に「泉南・子ども・語ろう会」を4回開催。子どもの権利に関する学習、市内に出て、まちの人にインタビューなどを経て、前文を作成しました。

 

・条例に具体的な施策が入っている

意見表明と参加の場、学びの機会と補償

「せんなん子ども会議」は、毎年、市内の小学校4年生から18歳に募集をかけます。毎月1回、土曜日に開催。毎回様々な子どもたちが集まり、自分たちができることを話し合い実行します。

年に1度市長に報告。市長は、アドバイスをしながら施策にできることは行っていきます。また、まちに出ていき、見つけた課題は、市の職員に話を聞き、提案につなげていきます。このような活動をする中で、大人に相談したり「おかしい」と思ったことが言えるようになったり、権利を守る行動につながっています。

 

 

 

 

「泉南市子どもの権利の日」では、毎年11月20日に子どもの権利について学校で学びます。
学年集会で話をするだけの学校もあれば、全学年で系統的に年に1~2回子どもの権利について学習する学校もあります。教職員は、この日に話をするためにも学ぶ機会があります。

幼児期からの学習、乳幼児から中学生の保護者や大人の学習、市職員の研修など幅広い学びの機会が確保されています。

 

 

 

 

 

・検証と公表のシステム

子どもを含めた市民モニターと行政が条例実施の検証と公表のしくみをつくっています。子どもの権利を子ども施策の根底に、市民モニター制度が市民の声を届けてくれます。庁内組織が充実し、ともに取組をすすめています。

第12次子どもの権利条例委員会報告

 

公立小学校では 先生から

どこに課題があるのか、子どもの言動や友だち関係を観察し、子どもの声を聴くことを指導の基本としました。子どもが行きたいと思える学校づくりのための取組をすすめています。

児童会や委員会活動を通して、子供の意見を大切にした活動を大切にしています。自分で考えて動いて解決できるように、懸念事項などを提示しつつ、子ども自身で決定できるような環境づくりをしています。また、児童会が企画を考え実行、子ども同士の悩みは、「お悩みBOX」を職員室前に設置して、児童会で答える活動をしています。

「校長先生『そうだん』があります」というGoogleフォームを活用した相談窓口を開設しています。子どもたちに配布されているタブレットから24時間アクセスできるようになっています。校長先生が、子どもたちと直接話をして、アドバイスではなく、子ども自身がどうしたいか、話を聞いて解決につなげています。

子どもにとっての最善は何かを考えて方向性を決め、子どもたちから、できること、できないことの理解を得ることを教職員の共通認識とし、子ども主体で、子どもの力を信じて、子どもの声を聴き、学校づくりをすすめています。

 

市民委員として

毎年、条例に基づく施策の取組の検証を市が行う時に市民目線で確認、市長に必要な報告をしています。市民モニター会議に参加、公立幼稚園での保護者人権研修で話をするなど条例を拡げる活動をしています。

 

 

 

 

 

 

条例に基づき毎年報告書が公開されています。

第16条条例の実施の関する検証と公表

 試行錯誤しながら取り組んできたことについてもお話がありました。必要なのは「条例を育てる」土台作りということばから、つくっただけでは終わらせないしくみが大切という強い思いが伝わってきました。

市職員や関係者が変わっても条例があることで、それを根底に施策がすすむことを確認。
この視察で、小平市にも、子どもの権利条例が必要であると確信しました。学んだことを活かし、提案につなげていきます。