ウィメンズネット・こうべ―女性と子どもの支援の取組と「六甲ウィメンズハウス」の見学

 

8月6日、困難な状況にある女性と子どもの支援に長年取り組んでいるウィメンズネット・こうべの正井禮子さんのお話しをうかがい、今年6月にオープンしたばかりの「六甲ウィメンズハウス」の見学をしました。

 

 

 

 

 

 

 

困難な問題を抱える女性のために

認定NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべは、1992年に発足し、DV被害や社会的要因などで困難な状況にある女性と子どもの支援を行っています。相談や緊急支援だけでなく「困難を抱える女性とその子どもの居住・生活再建支援事業」「デートDV防止教育事業」「居場所の運営」、心のケアや学習支援、就労支援、食糧支援など総合的に行っています。

 

住まいの確保と心のケア

2024年の内閣府の調査によれば、成人女性の4人に1人がDVを経験。その6人に1人が家庭内で生命の危険を感じる経験をしているにもかかわらず、2割しか夫と別れていません。経済的理由や身内の反応でさえ「暴力を受けるあなたに問題がある、我慢しなさい」と言われ、住まいの確保ができなくて行く場所がなければ逃げることさえできません。度重なる暴力を受けることで、自己決定を奪われ、決定する権利があることさえ分からなくなります。DV被害者が暴力から逃れるためには、安心して暮らせる住まいの確保と心のケアが必要であり、正井さんが続けてきている伴走型の支援が重要です。

 

デンマークや韓国なども住まいに加え、特に子どもの心のケアをしっかり行います。暴力を目の前で見たり、受けて育った子どもの脳は80%のダメージを受けます。子どものケアは必須であり、おこなわなければ、連鎖が続くことにもなってしまいます。イギリスでは「全ての人は、安心・安全に尊厳をもって暮らせる住まいを持つ権利―ハウジングライツ―がある」という思想のもとDV被害者の住まいの確保と経済的支援、母子の心のケアが責務になっています。日本では加害者に罰則がないのはおかしいなど、国の取組みの遅れと課題の提起がされています。台湾のように幼児期からジェンダー平等教育が行われ、人権意識を持った、女性や子どもたちの施策を国として進めていくことが必要であると強く感じました。

 

 

 

 

 

 

 

「ここに住みたい」と思える住まいづくりが現実に

正井さんは、2010年にデンマークに女性支援の視察に行き、おしゃれで温かい雰囲気の上、子育てやプライバシーの配慮が行き届いた母子施設を見て、「日本でもこんな住まいがつくりたい」という長年の願いがありました。そして今年、念願の「六甲ウィメンズハウス」がオープン。支援者からの寄付と地元企業の旧社員寮の提供によって実現しました。ハウスに入るとすぐに広く明るいキッズスペース、コミュニティカフェやシェアオフィスなどの共有スペースがあり、入居者同士の交流や地域住民が緩やかに集えるよう工夫もしています。家具は、すべてIKEAが提供し設置も協力。おしゃれな空間がつくられています。

新たな互助居住モデルの提示です。このように、NPOと企業が連携し、ジェンダーの視点もある社会貢献の建物をつくる取り組みが、各地に広がっていくことをともに願い、尽力したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

事前面談をして入居が必要と判断された、小学生以下の子どものいるシングルマザーや経済的困難を抱えた女性たちは、生活や就労、相談のサポートを受けながら、原則3年(学生4年)で自立を目指します。(敷金・礼金・仲介手数料なし家具付、タイプ別の家賃設定、その他共益費等が必要)

 

 

 

 

 

 

 

幸せと安心を

国は、少子化対策といいますが、本当の少子化対策は、今を生きる子どもが幸せと思えることが大切、相談を受けるということは、孤立させないこと、信じてもらうことで、安心とパワーを取り戻すことができるという言葉が強く残りました。多くの学びと課題提起から困難な問題を抱える女性の支援についてどのような提案ができるのか考えていきます。